東京高等裁判所 昭和45年(ネ)1700号 判決
右認定の事実からすると、渡辺弁護士は控訴人の当初の訴訟代理人である大村弁護士に替って本件の訴訟委任を受け(当裁判所もそれを知って第四回期日以後は右渡辺弁護士を控訴代理人として扱い、第五、第六回期日の各呼出状を発したのである。)、遅刻などで不出頭の扱いにはなったが、現実に当裁判所法廷に出頭するなど控訴代理人として行動していることも明らかであり、渡辺弁護士は控訴人から実際に訴訟委任を受けた権限のある訴訟代理人と認めることができる。
三 民訴法八〇条一項は訴訟代理人の権限を書面をもって証することを要する旨規定しているけれども、右規定は訴訟の進行上将来生ずるかも知れない代理権の存否に関する争を防止し、訴訟手続の安定と迅速・円滑な進行をはかろうとする趣旨に出たものであって、訴訟委任の届出を書面による要式行為として定めたものではない。そして、右訴訟代理権の存否は、訴訟委任状に限らず一切の立証方法をもって証明することが可能と解すべきであるから、前示のように渡辺明弁護士の当審第四回期日以後における訴訟代理権を肯認することができる以上、同弁護士が呼出状の送達を受けて出頭しなかった第六回期日が休止となり、その三月後休止満了によって控訴人の本件控訴が取下になったものと看做されたのはやむを得ないところであり、右措置に不適法の廉はない。
(浅賀 小木曾 深田)